前十字靭帯損傷における問題点
前十字靭帯(ACL)損傷は基本的に手術が必要となる怪我であり、復帰までに術後9ヶ月程度必要になることから、スポーツ選手にとって大きな不利益となる怪我の1つとなります。
医療従事者及びトレーナーは長期に渡り選手をサポートすることになりますが、その期間の中でも外してはいけないリハビリのポイントの逃すと、身体機能が不十分な状態で復帰しているケースに遭遇してしまいます。
元の競技レベルに戻れないだけでなく、再受傷(同側・対側)の確率も10-20%との報告も見られます
今回はACL損傷術後リハビリについて、基礎知識及びリハビリのポイントを紹介していきます。
元の競技レベルに確実に復帰し、再受傷の確率を限りなく最小限にできるようにすることを目標とします。
受傷起点
ジャンプの着地動作や切り返しなどのカッティング動作である非接触型が多く、その際に膝関節軽度屈曲位・膝外反(いわゆるknee-in・toe-out)に、体幹側屈・対側への回旋が加わり、外反ストレスが増大することで発生するとされています。
ACL損傷を予防するには、
片脚での着地動作や急激な方向転換の際にknee-inを軽減させる体幹・股関節による動的な制御能力が必要になります。
復帰基準と復帰不良例
ACL損傷手術後の復帰不良例として、疼痛・恐怖心・筋力低下・伸展制限が報告されています。
術後のリハビリにおいて術創部の問題や関節機能低下、それに伴う筋力回復の遅延、その結果としての恐怖心の残存が考えられます。
リハビリが十分に進まず、筋力の左右差・着地時の動作コントロール不良・パフォーマンステストの低下が認められ、競技復帰ができない例も見られます。
そのため術後リハビリテーションにおいて、
制限のない関節可動域
左右差がない筋力
動作コントロールできた状態でのパフォーマンステストクリア
その結果として恐怖心なくスポーツ復帰できることを目指します。
リハビリのポイント❶|膝の可動域改善
膝関節は屈曲と共に下腿が内旋することで、関節面の接触による安定を保つことができることから、膝関節屈伸に伴う回旋可動性の改善が膝関節の安定性改善につながります。
下腿内旋エクササイズ
踵より下腿を内旋させたまま膝関節の屈伸を行います。
内旋可動性の低下は膝外反の代償を伴うため注意が必要となります。
リハビリのポイント❷|筋力の回復
内側ハムストリングス・大内転筋トレーニング
下腿内旋位の状態で股関節伸展運動を行うことで内側ハムストリングスの強化を図ります。
内側ハムストリングスは膝内側の安定化に貢献します。
さらに内転筋である大内転筋は膝関節を安定させる筋と筋連結することから、内転筋の強化を図ります。
股関節屈曲トレーニング|力の吸収
トレーニング初期では、膝関節の運動を最小限とし股関節優位のトレーニングを行います。
ヒップヒンジで習得した股関節屈曲動作を主として、デッドリフトやスプリットスクワットで、ハムストリングスのトレーニングを行います。
スクワット動作の確認
重心が後方に偏位し、大腿四頭筋の過剰収縮により膝関節には前方剪断力が加わります。
重心が後方偏位する原因として股関節動作の低下が挙げられます。
股関節制御を優位とした動作獲得を目的とし、スクワットのような股関節を屈曲伸展するトレーニングの前に、動作の意識づけとして行われることが多くあります。
3関節でのバランス良い制御が重要となり、股関節制御を十分に使えないことで、足関節・膝関節への負荷が増大し、障害発生につながるため、自由度の高い股関節を使うことで衝撃吸収を行う必要があります。
股関節での力の吸収ができる状態にて膝関節周囲筋全体のトレーニングを行います。
リハビリのポイント❸|動的コントロール
片脚着地動作の安定
ACL損傷は、接地後30msまでに急激な外反+下腿内旋が生じ、接地後40ms付近でACL損傷が起こるとされています。
着地後に筋による制御を行うには150ms-200ms必要とされていることから、意識的に膝関節を中間位に保つトレーニングでは膝関節制御の改善が見込めず、無意識化での制御が必要となります。
そのためknee-in動作の改善に加え、膝関節に大きな外力が加わるストップ動作、切り替え動作、ジャンプ着地動作時の膝関節のアライメントである、動的な動作の改善が必要となります。
スポーツ復帰基準
スポーツ復帰では
✔︎可動域制限なし
✔︎筋力左右差90%以上
✔︎パフォーマンステスト90%以上(動作左右差なし)
✔︎不安感・恐怖心なし
以上を達成することを目標にします。
可動域・筋力に加えて、動的な動作の改善も必要となることから、様々なトレーニングを通して膝関節の安定化を図る必要があります。
以上、
前十字靭帯損傷後の復帰までのアプローチをご紹介しました。
安全に確実に復帰するためにも専門家によるリハビリ・トレーニングがおすすめです。
理学療法士によるパーソナルトレーニング
医療の現場でも用いられる徒手療法にて、筋・関節の状態を適正化させることで力が入りやすい状態を目指します。
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